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忘我境界

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忘我境界標題.jpg
忘我境界.jpeg
官方宣傳圖
原名 忘我境界Doppelganger
常用譯名 忘我境界
忘我境界 分身
類型 暗黑懸疑類視覺小說
平台 Windows
分級
R-18
開發 UGCP
發行 UGCP
製作人 旋牙暗霧
編劇 旋牙暗霧
程序 旋牙暗霧
美工 旋牙暗霧
音樂 PPI、まっつぁん
引擎 吉里吉里
發行時間 2005年8月20日
改編載體 設定集Fanbook
相關作品 忘我境界點頓之庭
ニライカナイ散華。
——泥黎彼境花殤。

忘我境界》(日語:忘我境界Doppelganger、英語:Boundary of Ecstasy)是由Underground Campaign(簡稱UGCP)製作並發行的一款視覺小說,於2005年8月20日發售。

另有衍生作品設定集《忘我境界 復調》及官方同人小說等。

遊戲簡介

  • 懸停可查看日語原文


忘我境界 終末.jpg
現代的日本中,在山間某處的偏僻都市枷原,
現代の日本、山間の地方都市枷原(かせはら)では
發生了連續殺人事件。
連続殺人事件が発生していた。
那些死者們的身體都被切斷了頭顱,
その死体はすべて首を切断され、
頭或身上的某一部分還被切去不翼而飛了。
頭部か身体のどちらかが持ち去られている。

調查事件的刑警、為「視線」所困的藝術大學生、
事件を追う刑事、「視線」に悩まされる美大生、
自稱來自於平行世界的青年、
パラレルワールドから来たと言う青年、
因幼時事故交換了頭顱的雙子兄妹、
幼い頃の事故で首を挿げ替えられた双子の兄妹、
被稱為解體匠的男士。
解体屋と呼ばれる男。

描繪了他們所經歷的或正常或異常的世界,
彼らが体験する正常と異常の境を描く、
由愛與瘋狂交織而成的群像劇。
愛と狂気が交錯する群像劇。


劇情介紹

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終末世界



驚愕。
時近黎明,
從多朗斯雷特的家中前去自家公寓的馬數寄屋通,
正當他打開玄關的門,一步踏進室內時,
那是從未想像過的光景,被長劉海掩住的瞳孔也情不自禁地睜大了。
沉澱於玄關前的,未見過陽光的冰冷空氣,
輕舔着通的脖頸,大肆侵入着開闊的一居室。
失去了生活感,被單一色調構成的房間衣服四處散亂。
HellyHansen品牌的短襪、穿舊了的海軍藍襯衫、
暗灰色的四角短褲、最近很中意的運動衫。
那些東西明明全部都已經被放入了髒衣簍中,打算之後要去洗的。
有人偷東西?
瞬間產生了這個想法,但是擺放整齊的衣櫃與抽屜一類還都保持原樣不變。
而且,
「…是誰」
而且,更重要的則是,
「啊、初次見面」
通顫抖着平時不怎麼使用的聲帶、極力編織着充滿恐嚇性質的言辭。
腦中的混亂達到了最高潮,如果可能的話,想要緊握一把刀並將其亮出。
「你這傢伙,是誰」
偷東西的人會擺出那樣的看起來很是愚蠢的笑容嗎?
「初次見面、『另一個我』」
那個在散亂的衣服上方站着的青年笑了起來。

那是焦油般的黑髮,被日陽灼燒,鍛造成的褐色肌膚,
雖感覺長了一副與身材不大相符的稚嫩的臉,
但卻沒有什麼其它特別的特徵的青年。
奇怪的則是,那一絲不掛的體態。
年齡看起來與通相同,或是差個兩三年左右。
「嘿嘿」
帶着活潑的表情,那個青年繼續了下去。
「抱歉、擅自將衣服弄亂了。
因有一點沒有能夠穿上的衣服,想要借用一下…」
吞下了唾沫,制止住了青年的想法。
「…等一下、我的問題你、還沒回答」
青年不好意思地撓了撓頭,
通強忍着喉嚨異樣的乾渴,不讓對方察覺出自己的狼狽,尖銳地提出異議。
說沒有衣服還真是古怪。
這樣的話這個男人在來這個房間之前是怎麼過的?
難道是赤裸着在外遊蕩嗎?
…不、還存在着比這更奇怪的事情。
通的房間在公寓的二樓。
公寓位於遠離國道的住宅街,雖說不過,但也有來往行人。
進入房間的方法只有打開大門或從窗戶鑽入,
而我一直會去確認房門有沒有上鎖。
(當然今天出門前也是),甚至玄關也是自己親手確認的。
不是『轉動鑰匙、開門而入』嗎。
那麼窗戶、
「呲…!」
從男人的身邊跑過,猛地一把拉開了墨綠色的厚重窗簾。
通睜大了眼睛、沒有一扇窗戶是破損的。
也都用鑰匙鎖着。
而且,再加上公寓還安上了自動鎖。
這樣的話…
「你這傢伙是」
這樣的話、那個男人是怎樣進入自己的房間的?

「我叫蘭格,是從『牆對面的世界』來的。
…為了給你、一些忠告」
這樣說着、有着褐色肌膚的青年再一次露出了平易近人的笑容。

浮誇的花朵、一者的Septuagint、超能力者、虛構的世界、
魔彈的射手、日記、依次消失於平行世界中的『我們自己』。
你從何處而來?我從哪裏開始?
●●的人是誰?●●的原因是誰?

你瞧、看見了吧。

終末將從那裏逼近。

終末世界

.

原文


驚愕。
明け方近く、
トランスレイトの家からアパートの自室に戻って来た馬数寄屋通(バスキヤ トーリ)は、
玄関前のドアを開け一歩室内に足を踏み入れた途端。
その思いもよらない光景に、長い前髪に隠れた瞳を見開いた。
玄関前に澱んでいた、日の光を知らない冷えた空気が、
ざわとトーリの首筋を舐めて広めのワンルームに侵入する。
生活感の無い、モノトーンで構成された部屋に散乱する衣類。
ヘリーハンセンのショートソックス、着古したネイビーのシャツ、
ダークグレーのボクサーショーツ、最近気に入りのトレーナー。
全て確か帰ってから洗おうと、脱衣籠に入れておいたものだ。
物盗りか?
一瞬そう思ったが、すっきりと配置されたクローゼットや引き出し類は整然とその姿を保ったままだ。
それに、
「…誰だ」
それに、何より。
「あ、はじめまして」
普段あまり使っていない声帯を震わせ、精一杯の威嚇を込めて言葉を紡ぐ。
頭の中の混乱が最高潮に達する。刃物を持っていたら握りしめて突きつけていたかもしれない。
「お前は、誰だ」
物盗りとはこんな風に、間の抜けた笑顔を浮かべるものだろうか。
「はじめまして、『もう一人の僕』」
その、散乱する服の上で青年は笑っていた。

タールのように黒い髪、日によく焼けた、鍛えあげられた褐色の肌。
体とは若干不釣合いな幼い顔付きをしているとは感じるものの、
別段変わった特徴のあるわけではない青年。
奇異なのはその、一糸纏わぬ姿くらいのものだ。
年の頃はトーリと同じか、二、三前後といったところだろう。
「へへ」
溌剌とした表情で、その青年は続けた。
「ごめんなさい、勝手に服散らかしちゃって。
ちょっと着るものが無くてさ、借りようと思ったんだけど…」
唾を呑む。青年の言い分を制止する。
「…待て、俺の質問に答えて、ない」
ばつが悪そうに頭を掻く青年に、
喉の異様な渇きを堪えながら、トーリは狼狽を悟られぬよう鋭く異議を唱えた。
服が無いとは妙なことを言う。
それじゃあこの男はこの部屋に来るまでどうしていたっていうんだ?
まさか裸で外を歩いていたとでもいうのか?
…いや、それよりもおかしいことがある。
トーリの部屋はアパートの二階だ。
アパートは国道から外れているとはいえ住宅街にあり、少ないとはいえ人通りもある。
部屋に入るには玄関を開けるか窓から忍び込む以外に方法は無いが、
自分はいつも外出前に部屋の鍵を閉めたかどうか確認している
(もちろん今日出る前もだ)し、玄関だってついぞ自分自身の手で
『鍵を回して、開けてから入った』ではないか。
そして窓は、
「ッ…!」
男の横を駆け足で通り抜け、木賊色の厚手のカーテンを引きちぎらんかの勢いで開け放つ。
トーリは目を見張った。窓は一枚たりとも割れていないし、
鍵もかかっている。
あと、駄目押しのようにこのアパートはオートロックだ。
それなら…
「お前は」
それなら、この男はどこから自分の部屋に入って来たんだ?

「僕はラング、『壁の向こう』から来たんだ。
…君に、忠告するためにね」
そう言って、褐色の肌を持つ青年は、再度人あたりのいい笑顔を浮かべた。

オーバーフラワー。一者セプトアギンタ。能力者。まがいものの世界。
魔弾の射手。日記。次々と消えていくパラレルワールドの『自分たち』。
どこからが君で、どこからが僕なのか。
●●たのは誰で、●●だのは誰なのか。

ほら、視えるだろう。

終末はそこまで迫っている。

鏡像世界



『我』常常會失去知覺。
父親那邊說這是因為『我』的身體很弱。
因為那兒時的『事件』的原因,我的身體承受了常人難以估量的負擔——這樣。
但是、真的是這樣嗎?
最近失去知覺的頻率異常之高。
從『事件』發生到現在,已經過去10年了。
沒關係的、相信我——父親那邊說。
不過、抱歉了。

『我』已經,完全無法相信父親他了。

夕日欲頹的午後四時。
枷原造形大學的校園中,完成了製作的學生們魚貫而出,
在星羅棋佈的實習棟間可以看得見新建成的影繪劇場。
在涼爽的秋日與反光的柿果散發出香氣的天空下,
走在人群最前面的是穿着時髦服飾的女學生與穿着針織衫的男學生,
一邊說着些無聊的話,一邊走向校門。
人群中有人程着公交車回了家,也有人走着去向大學周邊的宿舍。
在熙熙攘攘的人群中,他與她穩步走着。
他與她是那樣驚人地相似,仿佛是一面鏡子一般。
『他』穿着單薄的襯衫,高針針織的長圍脖與牛仔褲。
『她』穿着寬鬆的針織洋服、絲巾與長裙,裝扮完全不同。
他們的長相完全相同,就像是複印一般,一模一樣。
他是木米良小馳,20歲,學生。
她是木米良美七,20歲,學生。[1]
二人是異卵雙胞胎。
「呦。正順路呢」[2]
快到校門時,有一雙手輕輕地推了下兩人的後背。
那是與二人同樣為CG科二年生的三黑江笑。
他穿着羽絨背心與工裝褲。有着與灰髮十分契合的少年般的面龐。
「笑」
兩人同時回過頭,這麼說着。
「今天來俱樂部吧、我來當VJ」
笑這樣邀請,美七臉上浮現出了可愛的笑容。
「啊、是這樣嗎?」
不過,她又含着歉意地皺起眉頭。
「抱歉了、今天還有事物要做」
「事物?」
什麼嘛——,不滿的笑這麼想着,而美七則用桃色的嘴唇應答到。
「接待、不可以嗎?」
如嗤笑一般。

從大學徒步十分鐘左右,就能到恬靜的住宅地一角,用常人的感覺來看就是「巨大」。
那是木米良二人的宅邸。
穿過森嚴的青銅門,厚重的玄關的橡木門被打開了。
「我回來了」
二人告知回家後,從昏暗的走廊深處,螺旋樓梯上緩緩走出來兩道人影。
「歡迎回來、小馳」
「歡迎回來、美七」
又一個鏡像。
那是年老的紳士的身影,美七與小馳的父親「們」。[3]
兩人穿着同樣的深色毛衣,甚至同樣將白髮梳在腦後。
以至於同樣用冰冷的紅茶色眼瞳在樓梯中段俯視着二人。
「我回來了、父親」
向那屬於同卵雙胞胎的父親——俊樹與葉介——再次告知已經到家了,
美七就這樣從螺旋樓梯的一旁經過。
「從啟吾那邊來電話了。
大概十分鐘左右就能到」
「這樣啊」
對於俊樹的言辭,她全然毫無興趣地回應着。
「已經累了」
這樣暗暗地表達出了想要休息,
美七在入口中心聳立的樓梯左側、自己的房間那邊消失了。
「...」
聽着門關閉的空虛聲響,小馳仍處在玄關。
「小馳」
「...我也、去房間」
「啊啊」
回到樓梯右側的自己的房間。
但正當小馳移動時、敞開着的門射入了茜色的光芒。
「...啊」
像是要切斷空氣。
「...到了嗎」
「好早呢」
引擎的聲音、在庭院中迴蕩。

「你好、小馳」
「...你好」
那是穿着穩重而有品位的西裝的男性。
是剛剛開着黑色的邁巴赫來到院子裏的春日居製藥的下一任社長,春日居啟吾。
雖然他作為社長缺少了幾分精悍,但溫柔的面龐卻讓人感到安心。
小馳也一樣,平時毫無溫度的臉在見到啟吾的一瞬間變得緩和了下來。
「來得很早呢」
「啊啊、的確有些打擾了」
啟吾的臉上露出了抱歉的苦笑。
「工作比想像中要早結束。所以就...」
「啊、...不、我並非是那個意思...」
小馳皺着眉頭,將視線從駕駛席上挪開。
「是這樣啊」
「欸?」
像是想到了什麼的啟吾轉過身,將手伸向後座。
摸索了什麼東西幾秒鐘之後,
啟吾將那個東西順着窗戶遞給小馳。
那個是
「是、這個」
「...啊...」
用翠雀花、麗缽花、午時花、金菊花及散尾葵編織而成的,
由藍色蕾絲緞帶困紮好的漂亮的花束。
「收下這預先裝飾過的花束吧」
「...感謝、
我想父親也會十分高興的」
小馳捧着藍色的花束,低下頭看去。
「當然...美七也會喜歡的」
「太好了」
聽到了期待中的話後,啟吾露出安心的表情。
「請進屋來吧。跟我父親也打聲招呼...」
但當小馳這麼招呼時,啟吾卻露出了不可置信的神態。
「不、今天就...」
「欸...?」

如火般的晚霞,轉場了。

「久等了、啟吾」
「...!」
被黑色古典禮服包裹着的細膩身體。
脖子上戴着白金項鍊是啟吾送給美七的禮物。
看着美七伴隨着美麗的夜色,在玄關現身時,小馳愣住了。
「之後我們二人要共進晚餐。
美七,你沒告訴他們這件事嗎?
這樣對你可不好」
「抱歉了啟吾。
不過,我怕如果說了這件事,會讓小馳整天都心情不好的」
原來如此,啟吾微微一笑。
「真有一個好的妹妹啊、小馳你」
「那麼、我晚上再回來。
我走啦」
美七把手搭在面帶崩壞的微笑的小馳上。
「...」
「...」
小馳低下頭,一言不發。
美七帶着憐憫的神情,如貓一般望着小馳。
「我先走了」
「...」
私語。
「怎麼了?臉色不太好哦」
呢喃。
「才不」
竊語。
「羨慕嗎?」
喃喃。
「才不」
低語。
「很是羨慕」
耳語。
「才不」
嘟囔。
「很可悲啊」
低吟。
「...」
真是殘酷。
「『美七』」
只有二人在竊竊私語。
「...早點去吧!」
微笑着的美七。咬着青白色嘴唇的小馳。

啊啊、在一個充滿鏡像的世界。
對着漫反射的鏡像,

哪個才是真正的我呢?我無法分辨。

鏡像世界

.

原文


『私』はよく気を失う。
父さんたちは『私』は体が弱いから、と言う。
あの幼い頃の『事件』で、私の身体には常人では計り知れない負担がかかっているから、と。
けれど、本当にそうなのだろうか。
最近は特に気を失う頻度が高い。
『事件』からはもう、10年は経とうというのに。
大丈夫、私を信じなさいと父さんたちは言う。
でも、ごめんなさい。

もう、『私』は父さんたちを信じられません。

日も傾く準備を始めた午後4時過ぎ。
枷原造形大学のキャンパスは制作を終えた学生たちが続々と、
その点在する実習棟から姿を見せる影絵劇場になっていた。
秋の涼しげな、それでいてどこか照り返しの強い柿の実の匂いのする空の下を、
最先端を行き過ぎた感のある服装をした女学生やジャージ姿の男子学生が、
たわいも無い話をしながら校門へ向かって流れていく。
バスに乗って家に帰るもの、大学近くの下宿先へ徒歩で帰るもの。
そのまばらな人波の中を、彼と彼女は歩いていた。
彼と彼女は驚くほどよく似ていた。まるでそれは鏡のように。
『彼』は生成りのシャツにハイゲージのロングマフラーとジーンズ、
『彼女』はゆったりとしたニットの洋服にスカーフ、ロングスカートといった出で立ちの違いはあったが、
その顔はまったく同じ。コピーをとったように、同じだ。
彼は木米良カケル、20才。学生。
彼女は木米良ミチル、20才。学生。
二人は二卵性双生児である。
「よっ、ミチカケ」
校門に差し掛かった時、二人の背中を軽く押す手。
二人と同じCG科二回生、三黒江笑(ミクロエ エム)だ。
ダウンベストにカーゴパンツ。アッシュグレーの髪がよく似合うその顔は、少年のように幼く見える。
「エム」
二人は同時に振り返り、発声した。
「今日クラブ来いよ、俺VJするからさ」
そう誘うエムに、ミチルは可愛らしい笑みを浮かべる。
「あ、そうなんだ?」
でも、と申し訳なさそうに眉をハの字にし、
「ごめんね、今日は用事があって」
「用事?」
なんだよー、と不満そうなエムに、ミチルは桃色の唇で答えた。
「接待、かしらね」
嗤うように。

大学から徒歩10分ほどの閑静な住宅地の一角に、常人の感覚で言うなら「広大な」、
木米良兄弟の邸宅はあった。
厳(いかめ)しい青銅の門をくぐり、重厚なオークの玄関ドアをカケルが開ける。
「ただいま」
二人が帰宅を告げると、薄暗い廊下の奥、螺旋階段をゆっくりと降りてくる二つの影。
「おかえり、カケル」
「おかえり、ミチル」
もうひとつの鏡像。
影は初老の紳士、ミチルとカケルの父親「たち」。
二人はまったく同じダークカラーのセーターを着、まったく同じように白髪を後ろに撫で付け、
まったく同じ冷めた紅茶色の瞳で兄弟を階段の中程から見下ろしていた。
「ただいま、父さん」
その一卵性双生児の父親---俊樹と葉介---にもう一度帰宅を告げると、
ミチルはそのまま螺旋階段の横をすり抜けていった。
「啓吾さんから電話があったよ。
あと10分ほどで着くと」
「そう」
俊樹の言葉に、まるで興味が無さそうに答える。
「疲れちゃった」
休みたい、と暗に言うように、
ミチルはエントランスの中心に聳える階段の左奥に存在する自室に消えていった。
「…」
ドアの閉まる空虚な音を聴きながら、まだカケルは玄関にいた。
「カケル」
「…私も、部屋に」
「ああ」
階段の右奥にある自室に戻ろうと、
開け放たれたままの扉から茜色の光が射すそこをカケルが動こうとした時。
「…あ」
空気を切る気配。
「…着いたか」
「早いな」
エンジン音が、庭に鳴り響いた。

「こんにちは、カケル君」
「…こんにちは」
落ち着いた、品のいい背広を着た男性。
それが今、黒のマイバッハで庭に乗り付けたカスガイ新薬の次期社長、春日居啓吾だ。
社長というにはどこか精悍さが欠けているものの、その優しい面差しは見ているものを安心させる。
それは彼も同じで、普段温度を感じさせないカケルの顔が啓吾に会った途端、ほんの少し和らいだ。
「早かったですね」
「ああ、まずかったかな」
啓吾は申し訳無さそうに苦笑いを浮かべた。
「思ったより仕事が早く終わったんだ。それで…」
「あ、…いえ、そう言う意味で言った訳じゃ…」
柳眉をひそめ、運転席から視線をそらすカケルに、
「そうだ」
「え?」
思い出したように啓吾は背を向けると、後部座席に手を伸ばした。
何かをまさぐるような動作が数秒続いた後、
啓吾がウインドウからカケルに差し出したもの。
それは
「はい、これ」
「…あ…」
デルフィニウム、トルコキキョウ、ガーベラ、クジャクソウ、アレカヤシ。
綺麗な青いレースのリボンでまとめられた花束。
「飾っておいてくれるかい」
「…ありがとうございます、
父も喜ぶと思います」
抱える程の青い花束を胸に持ち、カケルは目を伏せた。
「勿論…ミチルも」
「よかった」
期待していた言葉に、啓吾は安堵の表情を見せた。
「中に入って下さい。父も挨拶を…」
ところがカケルがそう勧めた途端、啓吾は不思議そうな顔をする。
「いや、今日は…」
「え…?」

夕焼け、暗転。

「お待たせ、啓吾さん」
「…!」
細くしなやかな肉体を包む黒のクラシック・ドレス。
首を飾るプラチナのネックレスは知っている、啓吾がミチルにプレゼントしたものだ。
玄関から極上の夜を纏って現われたミチルに、カケルの動きが固まった。
「これから二人で夕食なんだよ。
ミチル君、言ってなかったのかい?
君も人が悪いな」
「ごめんなさい啓吾さん。
でも、言ったらカケルの機嫌が一日中悪くなると思って」
なるほど、と啓吾は微笑んだ。
「本当に妹思いだね、カケル君は」
「それじゃあ、夜には帰って来るわ。
行ってきます」
微笑を崩さぬまま、ミチルはカケルの肩に手を添える。
「…」
「…」
カケルは俯いて黙り込む。
その様を愛おしそうに、ミチルは猫のような目で嘗め回した。
「行ってきます」
「…」
囁き。
「どうしたの? 顔色が悪いよ」
囁き。
「やめて」
囁き。
「羨ましい?」
囁き。
「やめて」
囁き。
「羨ましいんだ」
囁き。
「やめて」
囁き。
「可哀想だね」
囁く。
「…」
残酷な。
「『ミチル』」
二人だけの囁き。
「…早く行け!」
微笑むミチル。青ざめた唇を噛み締めるカケル。

ああ、そこは鏡だらけの世界。
乱反射する鏡像に、

どちらが本物の私なのか、わからなくなる。

解體世界



西門判治為了去取遲來的午餐,
去了從大學要步行三分鐘的咖啡廳『赤瞳(Red Eye)』取預定的等待做好的蛋包飯。
在茶色裝修風格的咖啡廳內,那個魁梧的身體坐在凳子上,
用體毛旺盛的手肘支着櫃枱。
「今天下午要幹些什麼呢?」
在初次登校時便很常來,赤瞳的店長比起熟人來說更像是親友一樣。
座間味忍一邊拿平底鍋炒着雞蛋包飯一邊問來。
「嗯—,要怎麼辦呢」
「很快就是集體展會了吧?我聽笑說了喲」
「嗯,一周後就是」
「但也真是少見呢,不同專業的同學們在同一個集體展會中出現」
「是這樣嗎?」
將在一周後開展的集體展會『bloom』,判治參加了。
但就職的內定還沒有決定,這個時期舉辦集體展會真是奇怪。
這樣還被同科的朋友嘲笑了。
是怎麼了嗎,判治這麼想着。
偶然多少有了些想要創造出來的東西,從那時候的朋友三黑江笑那邊
發聲問道你這次能否與相識的人一起參加展會的聲音。
我想這是非常自然的東西。
「這次要解體什麼呢?」
染成橘色的雞肉米飯上被蓋上了半熟的雞蛋,
用番茄醬繪畫出一個可愛的心形,
忍把它遞到判治面前。
「是特別服務哦。」他加上了這麼一句,將桑格莉亞酒注入裝着冰塊的玻璃杯中。
「長頸鹿」
「欸,很有趣呢。會出現什麼東西呢」
「那還是秘密」
「我很期待呦」
判治是雕塑科四年級學生。
好幾年都因為學分不夠而留級,在大學中是小有名氣的名人。
不過讓他變得有名的理由,除了這個之外還有其它幾個。
那其中之一的是判治的作品,保持着一貫的特徵
他會先在大學內製作出巨大的石膏像,然後在展會時在會場自行將其『解體』。
將石膏做成的維納斯像解體後會露出的腐葉土和獨角仙的幼蟲。
將醜惡的怪物雕像解體後出現的霞草。
玻璃制工藝品、亮片、絕緣電線、手機、瓶裝可樂。
外表上無法預料的東西,由判治親手解體的石膏像中露出了身姿。
從表演中得到了綽號『解體師(解体屋)』。
而另一個綽號則是
「吶、三色菫」
「嗯?」
(後文待譯)
解體世界

.

原文


西門判治(さいもん はんじ)は遅めの昼食を取るため、
大学から徒歩三分のカフェバー、『レッドアイ』で注文したオムライスが出来るのを待っていた。
茶系のインテリアでまとめられた店内で、その大柄な身体をスツールにちょこんと乗せ、
カウンターに毛深い肘を預けている。
「今日の午後はどうするの?」
一回生の頃から通っていたため、もう顔馴染みと言うより親友のような仲のレッドアイの店主、
座間味しのぶがチキンライスをフライパンで炒めながら聞いて来る。
「んー、どうしよっかなあ」
「もうすぐグループ展なんでしょ? エムから聞いたわよ」
「あ、一週間後」
「でも珍しいわよね、科が違う子同士のグループ展って」
「そうかな?」
一週間後に控えたグループ展、『bloom』に判治は参加する。
就職の内定も決まっていないのに、この時期にグループ展なんてどうかしてる。
そう同じ科の友人には笑われた。
どうかしてるかな、と判治は思う。
たまたま創りたいものがあって、ちょうどその時友人の三黒江エムから
今度知り合いと一緒にやるグループ展にお前も参加しないかと声をかけられた。
ごく自然な流れだと思うんだけど。
「今度は何を解体するの?」
オレンジ色に染まったチキンライスに半熟の卵をのせ、
ケチャップで可愛らしいハートマークを描くと
しのぶはそれを判治の前に差し出した。
「サービスね」と付け加え、サングリアを氷を入れたグラスに注ぐ。
「キリン」
「へえ、面白そうね。何が出てくるのかしら」
「そりゃまだヒミツ」
「楽しみにしてるわ」
判治は彫刻科の四回生。
何年も単位が足りずに留年しているため、大学内ではちょっとした有名人だ。
もっとも彼を有名たらしめている理由は、それ以外のいくつかの理由のほうだが。
そのうちのひとつが判治の創る作品で、一貫した特徴として
彼はまず大学内で巨大な石膏の彫像を作り、それを展覧会期内に会場で自ら『解体』する。
石膏でできたビーナス像を解体して現れる腐葉土とカブトムシの幼虫。
醜悪な怪物の像を解体して現れるカスミソウ。
ガラス細工、スパンコール、配線コード、携帯電話、瓶詰めのコーラ。
外見からは予想もつかないものが、判治の手にかかって解体された石膏像の中から姿を見せる。
そのパフォーマンスからついたあだ名は『解体屋』。
そしてもう一つのあだ名は
「ねえ、パンジー」
「ん?」
その名前と類人猿のような外見からつけられた愛称で、しのぶは判治の名を呼んだ。
「ちょっと話は変わるんだけどね」
オムライスを3分の2以上食べた判治の口元を、
「ケチャップついてる」
母親のようにペーパーナプキンで軽く拭ってやってから、
しのぶは判治に渡したものと同じサングリアを手元のグラスに注ぐと、
そのカシス色の液体を一口飲んでから話し出した。
「あの事件さ」
「あの事件?」
「今流行りの」
「…ああ」
そう言われて、思い当たる。
「連続首切り殺人」
こくりとしのぶは頷いて、迷惑そうに眉をひそめた。
「もう三ヶ月は経つわよ、その間に何人死んだと思う?」
「いや、僕んちテレビないし」
付け加えておくと新聞も読まない。
世俗の騒動には興味が無いのだ。
「昨日の死体で26人目だって。ほんと」
ごくり、と。
「警察はなにやってるのかしら」
しのぶは溜飲を下げるようにサングリアを飲み干した。

秋になったとは言え、昼下がりの青空はむう、と蒸すように判治には感じられた。
レッドアイを出た判治はつなぎの袖を腰元で巻くと、
大学に戻るか街に出るか考えていた。
丁度作品に使う材料が切れるか切れないか、といったところなのだ。
「どうするかなあ」
つなぎのポケットに手を突っ込み、ごそごそとまさぐる。
さっきランチの代金を払ったばかりの財布をそこから引き抜き中を覗く。
「うーん…」
昼は抜いてもよかったかな、と判治は後悔した。
仕方なく大学に戻ろうかと、足を大学のある坂の上に向けようとした時だった。
「おい、君」
「はい?」
坂の下から声がかかる。
そこには背広を着た、垢抜けない風体の大男が一人。
この天気で背広は暑そうだな、と判治は思った。
実際その男もそう思っているだろう。
その顔には大粒の汗が浮かんでは首筋を伝い、汚れの首輪のできた襟元に吸い込まれ続けている。
「この近くの住人か?」
「あなたは?」
「警察だ」
男は胸ポケットから黒い、縦長の手帳を取り出した。
その手帳には男の顔写真と『弟子屈 勝弥』の名前が記載されている。
テシカガカツヤ、とでも読むのだろうか。
「へえ、これが本物の警察手帳ですかあ。初めて見たなあ」
感心する判治に、男は困ったような視線を向けた。
薄汚れたつなぎを着た怪しい風体の男だと思って声をかけたものの、
あまりの邪気の無さに拍子抜けした、そんな表情だ。
「少し聞きたいことがあるんだが」
「はいはい、なんでしょう?」
「この辺りで不審な人物を見かけたことは?」
「不審?」
そうだなあ、と判治は顎に指を当てる。
自分もその中に含まれているかもしれない、なんて考えは髪の毛先程も無かった。
「うちの大学になら変人はいくらでもいるけど、
警察のお世話にならなきゃいけないような不審な人間はいないと思いますけども」
「君は大学生か?」
刑事、弟子屈はさらに目を丸くした。
それから自分の眼力も鈍ったものだと小さく溜息をつく。
「ええ、そこの枷原造形大の」
「…そうか」
「何か事件でも?」
「いや、それは…」
判治は眼鏡の奥のどんぐり眼で、弟子屈の顔を見上げる。
「連続首切り殺人事件?」
そう尋ねると、弟子屈はそれきり口をつぐんでしまった。
どうやら図星かな、と判治は思った。
「いやあ、大変ですねえ」
弟子屈はなんだかもう、早く話を切り上げたそうに額にその大きな手をあてる。
「君も大学の友人に注意するよう言っておいてくれ。
どうせ毎日夜遊びしてるんだろう」
「やだなあ、それ偏見ですよ。大学生が皆毎晩コンパしてるわけじゃないです。
ま、けど」
判治は弟子屈の顔をまじまじと見ると、屈託の無い笑顔を浮かべた。
「刑事さんみたいないい男とだったら夜遊びしてみたいですけど」
「な…ッ!?」
その不意をつく台詞に弟子屈の顔がみるみる紅潮していく。
「それは…その、何…どういう…ッ、いや、その…ッ!」
「わはははは」
狼狽という言葉がこれ以上というほどに似合う弟子屈を
悪戯が成功した子供のように眺めて、
「それじゃ。また会えるといいですね」
手を軽く二、三度振ると、判治は弟子屈に背を向け、大学へと続く坂を上って行った。
「…」
判治の去った後に生ぬるい風が吹く。
「…なんで、わかったんだ…?」
狐につままれたような顔で、弟子屈は奇妙な男の背中を見送った。

そして、世界は解体される。

登場角色

武凱貫一(ぶがい かんいち)
武凱貫一.png

追蹤連續獵奇殺人事件的枷原署刑警。

西門判治(さいもん はんじ)
西門判治.png

「解體世界」的主人公。
枷原造型大學雕刻科四年級生。
統稱「パンジー」

木米良小馳(きめら カケル)
木米良小馳.png

「鏡像世界」的主人公。
與雙胞胎妹妹美七一起作為枷原造型大學的走讀生。
喜歡着妹妹的未婚夫。

馬數寄屋通(ばすきや とおり)
馬數寄屋通.png

「終末世界」的主人公。
常常能夠感受到無休止的『視線』,
被在精神上窮追不捨。

蘭格(ラング)
蘭格.png

出現在原本的通的身邊的
自稱是從『平行世界』來的青年。
自己與通在『同個指針(pointer)』,
警告正在被某人獵殺着。

木米良美七(きめら ミチル)
木米良美七.png

小馳的妹妹,
原來『作為小馳』的人。
對哥哥抱有扭曲的愛情。

弟子屈勝彌(てしかが かつや)
弟子屈勝彌.png

枷原警察署的刑警。
與前輩武凱貫一
保持着性的關係。

多朗斯雷特(トランス レイト)
多朗斯雷特.png

自稱精神科醫生。
作為通的性伴侶的交談對象。
興趣是雕金。

(更多角色待後續補充)

STAFF

編劇、插畫、程序:旋牙暗霧

音樂:PPI

效果音:まっつぁん

相關音樂

  • OP曲:《
作編曲、作詞:PPI
演唱:bixiy
PV:旋牙暗霧
寬屏模式顯示視頻

  • ED曲:《soon ripe,soon rotten》
作曲:PPI
寬屏模式顯示視頻

衍生作品

  • 忘我境界 復調》(日語:忘我境界Poliphony

忘我境界Doppelganger》的設定資料集。
除角色介紹、遊戲插畫線稿、其它視角故事、各話介紹外,
還收錄了新同人漫畫兩部,共計15名畫師參加。
共227MB、137頁。

日語原文

忘我境界Doppelganger設定資料集。
キャラ紹介、イベントイラスト線画、サイドストーリー、各話紹介の他、
描きおろし漫画二本も収録。ゲスト様15名参加。
容量:227MB 全137ページ

註釋

  1. ミチル(美七)」與「カケル(小馳)」可另寫為「満ちる(指月滿)」與「欠ける(指月缺)」
  2. ミチカケ(道掛け)」諧音「ミチル(美七)」、「カケル(小馳)」
  3. たち」可譯為「X方(即XX那邊/這邊)」或「X們」

外部連結

拉司蒂·琺姒
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